街中からスポーツ走行まで余裕でこなすVツイン
街中での乗りやすさは言うことなしの696だが、爽快さを味わうためには的確なシフトワークでパワーバンドを保つ必要がある。個人的にはライダーとオートバイが協力して気持ちのいい走りを生み出すことがライディングの醍醐味だと思うが、「余裕がない」とか「せわしない」と感じる人もいるだろう。こうした要望に応えて新登場したのがモンスター796だ。 エンジンはストロークのみを伸ばしてプラス107ccの排気量とすることで低中回転域でのトルクを増大。その効果はゼロ発進時から明らかで、ズボラなアクセル/クラッチワークでもスタスタと動き出し、そのままアクセルを大きく開けばズダダッ! と元気のいい排気音を響かせて速度を増していく。6速・100km/h時は約3500回転で、流れに乗って走るなら6速ホールドで充分。2速落としてアクセルをワイドに開ければ豪快な加速も楽しめる。696プラス107ccどころではなく、200ccぐらい大きく感じるほどの余裕さだ。ただ、多くの回転域でハンドルとステップにブルブルとした振動が出る。1時間程度なら「Lツインの味」として楽しめるものの、長時間の連続走行に向いているとは言えない。 ギア比とパワーバンドの関係で、多くの峠道では2速を多用することになるが、どの回転域でも過敏に反応することがないから余計な気を使わずにアクセルをオン/オフできる。 ハンドルに荷重が乗りやすい独特のポジションは賛否両論だが、696より2cm高くなったことで上体への負担が減ったことは素直に歓迎したい。幅広ハンドルバーへの不用意な入力に気を付けていれば、ハンドリングそのものは軽快。初期旋回も二次旋回も素直で、思ったラインに乗せやすい。フロントに比べるとリアサスの沈み込み量が少ないフィーリングだったが、フルバンク中の安定性も高く、ギャップ通過時の収束性も良かった。 標準装備のABSは介入がやや早めでスポーツライディング向きではないが、モンスター796の現実的な使われ方を考えれば不満なし。レバーとペダルに適度なキックバックがあって、作動していることを報せてくれる。 特に尖ったところはないが、2気筒エンジンの鼓動やトラスフレームの微妙なしなりを味わいながら流して走っていても、アベレージスピードは意外に高いというツウ好みの特性。「モンスター696か1100か」で迷っていた人には最高の答えが用意されたということだ。