最近、私が注目しているライディンググローブがあります。
ACE社というフランスのグローブ専業メーカーが開発したFIVEというブランドです。 ACE社はモーターサイクルウェアのサプライヤーとして、30年以上にわたって欧州の有名老舗ブランドをいくつも扱ってきた実績があります。
そこで得たプロダクトのノウハウや世界選手権ライダーでもあった代表のフランク・ファッジオ氏自身の経験を生かし、長年の研究を重ねて開発されたのがFIVE。
「世界一のグローブを目指すので、今もこれからもグローブだけしか作らない」と ファッジオ氏は宣言しています。その志の高さゆえの割り切りが実に気持ちいい。 奇をてらわず真正直にグローブ作りに専念し、良い製品を作るためなら絶対に妥協しない。
「５本の指」をそのままネーミングにしてしまうところにも、グローブ作りのスペシャリスト集団としてのプライドと思想がよく表れていると思います。
日本には今春初上陸ですが、欧州を中心に世界ではすでに26カ国以上で発売され、モトGPをはじめとする世界選手権ライダーにも愛用され実績を上げています。 以前から外誌のテスターが装着しているのを目にしたことがあり、私もその評判は聞いていましたが、今回実物に触れてみて私なりに感じたことなどをレポートしたいと思います。

FIVEの製品コンセプトは３つ。

1.プロテクション（必要な部分に必要十分なだけの保護性能を持たせる）
2.フィッティング（優れたフィッティングが操作性を高め安全をもたらす）
3.デザイン（ユーザーに愛着を持たれる先進的でクールなデザイン）

そのすべての要素を最高レベルで実現すること……
とても明快で分かりやすいコンセプトですね。

もうひとつの特長はグローブ専業メーカーならではの豊富なバリエーションです。
トータルでは50以上の型があるそうですが、今回国内にはレース、ストリート、
レイン、ウィンターの４カテゴリーにそれぞれ３型ずつ計12タイプをラインナップ
しています。

トップモデルのRFX1はモトGPで活躍するアンドレア・ドヴィジォーゾやアンソニー・ウエストなどのトップライダーに愛用され、その製法や素材のクオリティはまったく同一レベルで作られているそうです。
モタード世界チャンピオン（2007、2008、2009年）のエイドリアン・シャリエ選手が愛用するショートモデルがまたカッコいい！
手軽に装着できてストリートからスポーツライドまで幅広くカバーする私のイチオシです。

通常、世界選手権レベルのライダーの場合、ウエアメーカーなどと年間でスポンサード契約を結んでいます。つまり身にまとうライディングギアはひとつのブランドで統一されているのが普通です。
ただし、そこは勝負の世界！　 レースに勝つことが仕事の彼らは、道具選びに妥協はしません。
とりわけ繊細なコントロールを必要とする、スロットルやブレーキ、クラッチ操作に直結する「グローブ」は最重要アイテムとなります。
「グローブだけはFIVEを使いたい･･･」厳格なスポンサード契約の中でこうした特例が認められていることからも、トップライダーがFIVEに寄せる信頼の高さを物語っていると言えるでしょう。

先日、トップモデルのRFX1レプリカをサーキットで試す機会がありました。
装着してまず驚いたのがフィット感です。
ナックル部分にハードプロテクターを装備しているので多少の固さやツッパリ感を覚悟していたのですが、いい意味で裏切られました。全体的にとても柔らかく、まるで長年愛用したグローブのように最初から手に馴染みます。
今までの経験から、プロテクション機能を高めるほどフィット感は犠牲になる面が出てくるものです。ライディングギア全般に言えることですが「安全性」と「動きやすさ」はある意味、相反するファクターなのです。
それがFIVEでは、特性の異なる４種類の革を使い分け、ケブラーストレッチを可動部に使うことで、従来の常識を覆す素晴らしいフィット感を実現しています。
特に素晴らしいのが指の関節部の自由度。
バイクの場合、手は操作系の要であり、非常に複雑な動きをします。
例えば、コーナー手前でのシフトダウンをイメージしてみてください。
右手は人差し指と中指の２本でブレーキレバーを引きながら、残りの２本指でグリップを握り、手首のスナップでスロットルを煽っています。こうした複雑な操作でも指の一本一本を独立させて動かしやすいので、正確なブレーキ入力やブリッピングが可能です。
操作しやすいことは、安全マージンも高まるということ。
ここまでライダーの繊細な要求に応えてくれるグローブは、フルプロテクションタイプのレーシンググローブとしては画期的だと思います。
後から知ったのですが、ハードプロテクターにも秘密がありました。
ナックル部を分割構造とすることで拳の形に自然にフィットするようになっていたのです。さらに手と直接接する内側には超低反発素材を採用し、快適な装着感とともに「ハードプロテクターのよる負傷」を防止しています。 ハードプロテクターは堅牢が故に、大きな衝撃を受けるとライダー自身を傷めてしまうこともあるからです。

新しさを感じさせるクールなグラフィックや機能美の塊のような先進的なデザインも現代の高性能マシンにフィットしていると思います。ぜひ実際に装着してグリップを握り、いろいろな操作を試してみてほしいと思います。走るほどにきっとその素晴らしさに魅了されることでしょう。

簡単には説明できません（笑）というのは冗談ですが、とにかくこのFIVEグローブは全てにこだわりを持って作っていて、素材、縫製、パーツひとつひとつにも全て意味があるといっても過言ではありません。
例をあげると、レバーを握る人さし指と中指の部分は細かい操作をする際に縫い目が気にならないように縫い目が外側になっている。 一方、プロテクション重視の小指と薬指は引き裂き強度をあげるために、縫い目が内側になっているんです。
これは、バイクで転倒した際、最もダメージを受けやすいのは手の小指側というデータから考えられた作りなんです。

フランク・フッァジオさんという方が社長のフランスのメーカーです。日本ではまだ無名ですが、ヨーロッパではすでにトップブランドの地位を築いています。
ファッジオ社長の机には、クレーム受付専門の電話があり、グローブの品質に関 するクレームは全て受け付けているそうです。実は、東京モーターサイクルショーにもいらしてたんですよ。
ヨーロッパではオフロード用モデルやレディースモデルなどもあり、ラインナップが非常に豊富です。来年には日本でもそれらのラインナップを販売開始する予定です。楽しみにしていてください！